「ヨーロッパも対中戦略に苦慮している」と報じたのは、2025年12月19日放送のNHK・BS「国際報道2025」だ。イギリス・ロンドンの中国大使館の移転計画をスターマー首相が承認する見通しとなって、周辺住民やメディアの反対が強まっているという。
中国への懸念から世論調査では反対が強い
中国が計画している新しい大使館はとにかく大きい。いや、大きすぎるというべきか。予定地は旧王立造幣局の跡地で、東京ドーム半分近くとヨーロッパ最大規模。世界的な金融街「シティー」に隣接し、観光名所のロンドン塔やタワーブリッジの目の前だ。さらに、敷地の地下にはシティーの秘密情報をやり取りするケーブルが敷設されているなど、通信を傍受される懸念も指摘されている。
そんなところに、外国が巨大大使館を造ろうとすれば、英国民が反発するのは当然で、NHKロンドン支局の大石真由記者は「市民の間でも中国に対する懸念があがっています。世論調査では、反対する人が賛成を上回っています」と伝えた。賛成26%、反対45%、不明29%だった。
ただ、「スターマー首相は、中国は安全保障上の脅威としつつも、経済面での関係強化が重要と述べました」「専門家は『安全保障と貿易関係のバランスをとるのは難しい』と指摘しています」と大石記者は報告した。その専門家は「(英国政府は)これ(移転申請)を拒否することで、経済的な報復措置を招くことを恐れている」と説明している。