瀬島龍三氏の薫陶を受けた
しかし、丹羽さんは、本の世界にのみ籠ることも良しとしていなかった。伊藤忠時代に、瀬島龍三氏の薫陶を受けたことが大きかった。
瀬島氏は戦前の大本営参謀。11年間のソ連抑留生活から帰国後、伊藤忠商事の幹部として働いていた。「問題が起きたら、すぐ飛行機に乗って現地に行きなさい」と教えられた。活字で知る知識はしょせん二次情報。まず自分の眼で確認するのが大切というわけだ。9年間の米国勤務時代、その教えを肝に銘じ、必ず現場を踏むことを実践した。
加えて、人に会って話を聞くことも心掛けた。巨人軍の監督だった川上哲治氏とは何度も会って直接、人生哲学を聞いた。V9監督。組織の在り方や人材の育て方について大いに参考になることがあったという。
丹羽さんは、無類の読書家であると同時に、労を惜しまず現場を踏み、積極的に人と会って教えも請うことをモットーとしたビジネスマンだった。「体験だけで生きてきた人の、人を見る力が5のレベルにあるとするなら、読書を重ねることで、そのレベルは倍近くになる」――そう強調していた。
共著も含めると著者は数十冊。印税はすべて図書館などに寄付していたそうだ。