日本経済の概況
予測
将来を展望するための3つのポイント
ポイント1
ナノテクで世界トップ目指す
政府や日本経団連をはじめとする経済団体は、今後、重点的に取り組む分野を先端産業、とりわけナノテク(超微細技術)に投資を行うべきだ、としている。がん細胞を狙い撃ちする薬、持ち運びができる燃料電池、薄くても破れない樹脂といった「夢の発明」につながる技術で、政府は2010年の国内市場規模を20-30兆円と推定している。日本はナノ材料の研究分野では世界のトップを走っている。 米国は1980年代にプロパテント(知的財産重視)政策に転換、国家予算も基礎分野に重点配分した。日本はそれに約20年遅れた。そのせいもあって、先端分野の開発競争で日本はこのところ、再三苦い思いをしてきた。その代表はゲノム(遺伝子情報)である。ヒトゲノムの解読は2000年に完了したが、各国別の貢献度を見ると米国が約70パーセント、英国が約20パーセント、日本はわずかに6,7パーセントにとどまった。その経験を生かして、ナノテクの開発競争に取り組む。
ポイント2
情報家電ブレイクの可能性
薄型テレビ、DVD録画再生機、カメラつき携帯電話といった「情報家電」の売り上げが急増している。日本における情報家電の市場は2006年に1兆円を越える、と見込まれている。今後は家電、コンピュータ、ネットワークの3つが完全に結合した製品が登場、さらに市場は広がりそうだ。総務省は2004年2月、すべての情報家電を家庭内でつなぐ通信規格づくりをはじめると、発表した。メーカーにかかわらず、テレビのリモコンで洗濯機やエアコンを操作できる、といったことができるようにするためだ。また、家庭だけでなく、ホテル、車中など場所を問わず使える製品も出てきそうで、日本の家電メーカーは開発競争に必死だ。
街中の証券会社にある日本とアメリカの株価を比較するスクリーンボード
ポイント3
少子化で伸びる高齢者産業
2050年には、65歳以上の高齢者の割合は35.7パーセントに達すると推定されている。介護保険を利用する在宅サービス、老人ホームなどの施設サービスなどは2004年現在、急速に伸びつつあり、大きな産業になるのは確実だ。
フリーター数の推計
もっとも、長期的に見ると、日本産業のアキレス腱は少子化である。生まれる子供の数は減り続け、2003年の出生率は1.29と、米国はもちろん、北欧諸国を下回る。生産年齢人口(15-64歳)はすでに1996年から落ち込んでいる。労働人口は急カーブで減り、年金、医療費や介護費は急増していく。このままでは経済、産業も弱っていくのは確実だ。解決法のひとつは、日本がこれまで消極的だった外国人労働者の受け入れを増やすことだ。本格的な少子化時代に、日本が生産年齢人口を維持するには年平均16万人の移民受け入れが必要だ、という国連の推計もある。もうひとつが、女性の雇用を増やすこと。保育サービスの充実、フルタイムでない働き方を支援していく、などの方策が検討されている。