「復興」への思いを込めて、福島県の農業高校の生徒が作り続ける「ハマナス」ジャムや琥珀糖
東日本大震災から9年が過ぎた。福島県南相馬市にある県立相馬農業高等学校は震災後、地元で育てた「ハマナス」や「菜の花」を利用した商品を開発、販売して地元の活性化や魅力の発信に一役買っている。
ハマナスを使った「ジャム」や「琥珀糖」など、これらはふだんの授業から生まれた。授業にあたる大和田行俊(おおわだ・ゆきとし)先生と5人の生徒たちに話を聞いた。
東京・御徒町で開催された「ふくしままつり」に出品した商品は完売した(2019年11月16日、17日開催「ふくしままつり 2019」、提供:相馬農業高校)
東京でのイベントにも出店 生徒が直接商品の魅力を発信
相馬農業高校は2019年11月16日、17日、東京・御徒町南口駅前広場で開かれた「ふくしままつり 2019」に、磐城農業高校や平商業高校、ふたば未来学園高校とともに出店。生徒たちが製造したパンやジャム、味噌、トマトジュースなどを販売した。
「多くのお客さんが私たちの商品に目をとめ、手に取ってたくさん購入してくれたので、うれしかったです」と、藤澤朱莉(ふじさわ・しゅり)さん(2年生)は振り返る。
「味噌が早くに売り切れて、数少なかったかなと。すごい人気でした」
そう話すのは、西原朱莉(にしはら・あかり)さん(2年生)だ。
このイベントのために用意した商品は完売。大盛況だった。
高校の授業では地元で採れる農産物の「6次産業化」に取り組んでいる。その授業は、食品の製造から販売までを生徒たちが考え、運営する製販一体のユニークなカリキュラム。
「生徒が『会社』をつくって運営しています。食品流通コースの2年生と3年生。1学年に3つの会社があって、それぞれに社長(代表)が就いています。社長の下に、販売部長や広報部長、経理部長と平社員(部員)がいるんです」
そう説明する蒔田愛(まきた・あい)さん(2年生)は、販売部長だ。
販売部は、校内で年に7、8回開かれる「相農ショップ」やイベントなどに出展するショップで接客に携わるほか、商品化したジャムなどをPR。売り場のポップを製作や、お客さまの動線の確保などを実践的に学ぶ。高校近くの家庭を訪問する販売実習もあって、蒔田さんは、「一人が台車を持って、『いらっしゃいませ』と売り歩きます。1年生は必ず通る道なんです」と言って笑った。
製造部は、ふだんの授業で食品製造の技術研究や実験を繰り返しながら、先輩が作った商品や自らが開発した商品の「秘伝」のレシピをもとに商品を製造する。「相農ショップ」の定番で、地元でよく食べられている「がんづき」というゴマをふった茶色い「蒸しパン」や、「ふくしままつり」に出品したジャムやマドレーヌ、パンにトマトジュース、味噌、お菓子にラクピスという乳酸飲料なども、生徒が試行錯誤しながらこしらえた。
指導に当たる大和田行俊先生の影響だろうか。江畑暁月(えばた・あつき)さん(3年生)によると、「地元愛が強い人ほど、地元の素材にこだわって食品研究しています」と話す。