2020年 6月 7日 (日)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(5)
3人の識者に聞く「民主主義の危機と地方分権の希望」

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「出口戦略」を先導した「大阪モデル」

   改正特措法による緊急事態宣言が出されると、各自治体の個性や特色、そのばらつきは顕著になった。これは改正特措法の法的な立て付けに根差している。諮問委員会の報告を得て政府は「全国的かつ急速な蔓延により国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」と判断し、緊急事態宣言を発出し、「基本的対処方針」を決める。今回の場合は、医療体制の維持、高齢者や障害者ら支援が必要な人の保護の継続、電力・ガス、飲食店など安定的な生活の確保や、物流・輸送、行政サービスなどの維持要請がそれにあたる。

   しかし、感染の拡大防止措置を行うのは都道府県知事で、施設の使用禁止、イベントの開催制限の要請や指示の判断は知事に委ねられる。国は宣言を出して大まかな基本的対処方針を打ち出すが、実際にどのような要請や指示を出すかは、地域の首長に委ねて実態に応じた対応を取るしかない。

   ところが政府対策本部は、いったん3月28日に決めた「基本的対処方針」を4月7日に改定し、「施設の使用制限の要請、指示は国と協議」という項目を追加し、これが混乱を招いた。東京都は7日にも休業要請の対象施設を公表する予定だったが、経済への打撃を気にかけ、社会的混乱を避けたいとする国側は、業種を絞るよう注文をつけて対立した。結局、都は10日午後に休業対象を明示し、国が「生活に必需」として対象にしないよう求めた理美容業、百貨店やホームセンターなどは対象とせず、国が対象入りに難色を示したゲームセンターやマージャン店などを対象に含め、「居酒屋」については、営業時間を午前5時~午後8時に短縮し、酒類提供も午後7時までとした。「国と協議」という一文を追加して手綱を握ろうとした政府側が、地方自治体に押し切られたかたちだ。

   だが感染防止について定めた「基本的対処方針」には明確な「出口戦略」は書かれていない。政府は5月6日までの緊急事態宣言の期限が迫る4日、宣言を同31日まで延長すると決めた。自粛要請によって地元経済が深刻な打撃を受けたのを背景に、大阪府の吉村洋文知事は、これに先立つ同1日、休業と外出自粛の要請について、段階的な要請解除の独自案を打ち出した。

   続いて大阪府は5日に対策本部を開き、段階的な解除に向けた基準を決めた。これは(1)感染経路が不明な新規感染者が10人未満(2)検査を受けた人に占める陽性者の割合(陽性率)が7%未満、(3)重症病床の使用率が6割未満として、この3点を「警戒信号の消灯基準」とした。(1)と(2)は日々の変動があるため、過去7日間の平均(移動平均)を見るという。

   感染状況が悪化した場合の「再入り口」基準についても、大阪府は(1)1週間の経路不明者の平均が前週と比べて同じか増加(2)経路不明者の人数がおおむね5人以上(3)陽性率が7%という三つの基準をすべて満たすことを条件とした。これに関連して吉村知事は、政府に、「具体的な基準を示さず、単に(宣言を)延長するのは無責任」と指摘した。

   こうした「大阪モデル」のユニークさは、具体的な数値を示した点だけではない。大阪府は11日から通天閣と吹田市の万博記念公園にある「太陽の塔」でライトアップによる「信号」の点灯を始めた。これは(1)3基準のいずれも満たしていない段階は「赤」(2)3つの基準をすべて満たし、7日連続のカウントダウンが始まった段階は「黄色」(3)7日連続で基準を達成した場合は「緑」という3色で感染状況を示す試みだ。通天閣のLEDパネルには、大阪府公認キャラクターの「もずやん」の泣き笑いの表情を映し、府民に状況を伝えるという試みもしている。いずれも、住民密着型の自治体ならではの発想だろう。

   こうした「大阪モデル」に対し、新型コロナ対策を担当する西村経済再生相は5日、知事権限の範囲で解除基準を打ち出したことは「いいことだ」としながらも、吉村知事の「出口戦略」という言葉について、「言い方は違う。『出口』ということなら、国が専門家の意見を聞いて考える話だ」とクギを刺した。さらに西村経済再生相は6日にツイッターで、「休業の要請・解除は知事の裁量」としながらも、「自身の休業要請の解除の基準を国が示してくれというのは矛盾。仕組みを勘違いしているのでは」と投稿した。

   これに対して吉村知事は、「迷惑をおかけした」とツイッターで表明。「休業要請の解除基準を国に示して欲しいという思いも意図もありません」と釈明しつつ、「宣言(基本的対処方針を含む)が全ての土台なので、延長するなら出口戦略も示して頂きたかった」と注文をつけた。これは、「基本的対処方針」を改定して「国との協議」を条件にした以上、政府も「出口戦略」について実効ある基準を出すべきだという不満の表明とも受け取れる。

   西村氏は7日の記者会見で吉村知事と電話で話したことを明かし、「むしろ絆は深まった」と和解をアピールして矛先を収めた。

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