「仮に請求したとしても法的根拠を欠く主張となる」
正木氏によると、契約の成立には双方の合意──つまり「申込み」と「承諾」が必要だという。
しかし、「張り紙を見ただけでチャイムを押した訪問者が、実際にその条件に同意して申込みをしたと評価できる場面は極めて限定的です。とくに、セールスや宗教勧誘などの訪問者は、多くが一方的に事務的・定型的な動きをしており、料金の掲示内容を読んで理解し、納得の上でチャイムを押したとは言い難い」としている。
加えて「5分ごと3000円」という金額設定に関して、「社会通念上、常識的とは言えず、仮に契約成立の余地があったとしても、民法の『公序良俗違反』(民法90条)や『消費者契約法第10条』により無効と判断される可能性が高い」という。
正木氏は「また、仮に支払いを拒んだ訪問者に対して『不払いはイタズラと判断し通報する』とした場合、通報が虚偽や過剰であれば、逆に『虚偽告訴罪』(刑法172条)や『名誉毀損罪』(刑法230条1項)などのリスクも否定できません」とも述べ、
「つまり、張り紙の掲示だけでは法的拘束力はほぼなく、仮に請求したとしても法的根拠を欠く主張となるでしょう」
と改めて指摘した。