FPによる解説|兄弟間で役割や思いを整理することの重要性
この事例で問題になったのは、兄弟がお互いの役割を「分かっているつもり」で進めてしまった点である。誰が何をどこまで担っているのかを、具体的に確認せずに日常が過ぎた結果、それぞれの中に「自分の方が負担してきた」という思いが積み重なった。
こうした不満は普段の生活では表に出にくい。しかし、相続という非日常の場になると、過去の積み重ねが一気に表面化する。確認や共有のないままでは、冷静な話し合いが難しくなるのは当然である。
相続トラブルでは、兄弟それぞれが「自分はどれだけ頑張ってきたのか」を意識するあまり、「相手にはどのように見えているのか」が争点になりやすい。そのため、兄弟が互いに自分の負担や気持ちを言葉にして、確認しておくことが大切である。
そうしておけば、相続の場で「自分ばかりやってきた」「なぜ知らせてくれなかったのか」といった感情的な対立を避けやすくなる。相続対策とは、財産を分けるだけでなく、兄弟間で役割や負担、思いを整理して、共有する作業でもある。
【プロフィール】
石坂貴史/証券会社IFA、AFP、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、マネーシップス運営代表者。「金融・経済、住まい、保険、相続、税制」のFP分野が専門。