問題の根っこは気候変動、収穫量が乱高下、価格が暴れる
おコメが高い、という。1俵のおコメは60キロ。お茶わんに軽く1杯のごはんは、乾燥した白米で約60グラム。1俵当りのおコメの値段の1,000分の1だと思えばいい。1俵2万円のおコメはお茶わん1杯20円になる(厳密にいうと精米時にヌカが出て1割減るので、もう少し高い)。1俵2万円は生産者価格。消費者価格はその2倍、40円から50円だ。
そのお茶わん1杯の横にならぶおかずは、何円だろうか。
総務省の家計調査では、単身世帯の食材の費用は45,000円前後、1日あたり1,500円。その中で、お茶わん1杯の数十円の支出は、どういう位置づけだろうか。
確かに値上がりはしたが、消費生活全体像の中で、コメが占める割合を考えれば、高い高いと叫ぶだけでは、始まらない。
問題の根っこは、気候変動。これからますます変動幅が大きくなり、農産物全体の収穫量は乱高下し、価格は暴れるだろう。
社会構造も、さらに激変する。就農人口は急減する。機械化大型化というが、日本の国土の大半は傾斜地で、大規模な稲作が出来る場所は限られている。
都市に住み、単に口を開けている「消費者」の立場に甘えていて、ある時、泣き叫ぶだけになる。そんなことがないように願っている。
(大前純一 NPO法人エコプラス事務局長)
大前純一氏のプロフィール
朝日新聞社で社会部記者としてハイテク、環境問題などを担当、朝日新聞社のインターネットメディア「asahi.com」を開設した時の責任者。米国西海岸サンノゼにサーバーを置いて配信するなど、当時としては画期的な取り組みを指揮した。現在のネットメディアの先駆者である。退職後、パートナーの探検家髙野孝子氏とNPO法人エコプラスを設立・運営。イヌぞりと人力だけによる北極海横断(1995年)の現場から、極軌道衛星とインターネットを使って世界の子どもたちと交流する「ワールドスクール」活動も行った。南魚沼市では、休日農業講座などの活動をしている。