走り回る白ナンバートラック「お宅のコメ、全部買い取る」
9月も中盤になると、南魚沼にも白ナンバーのトラックが走り回ってコメを買いあさって行った。農家に横付けした中型トラックには、会社名は一切なし。若い屈強な男達が、農家の倉庫から米袋を次々に積み込んで風のように去っていく。そんな光景があちこちで見られた。
ふるさと納税では、南魚沼市への寄付が急増。市内の有力な販売元には十分なコメがなくなってきた。「お宅のコメ、残っていたら全部買い取る」などという人たちが、農家を巡るようになってきた。
それまで、1俵 2万円以下で農協が買い取っていたコメを、「2万8000円でどうか」などとこれまでにない値段で仕入れたいという電話もかかってくるようになった。
がんばっている若手農家には、私は「1俵3万円で直接販売できれば、専業として成立するからがんばろう」と励ましてきた。しかし、ほとんどが、「3万円じゃ、だれも買ってくれないでしょ」としり込みしていた。その農家が、段々高値に慣れてきた。1俵3万円が、3万6000円にと、月を追うごとに提示される値段が上がっていった。
ふるさと納税をもっぱらとする事業者の倉庫には、「山の反対側の津南町のコメが積まれていた」などという話も聞くようになった。
冬が近づくころには、関東ナンバーの自家用車が、スーパーやらドラッグストアやらに次々と止まっては、米袋をいくつも積み込んでいくのを見かけるようになった。「転売ヤー」さんたちであろう。