年寄りが廃業して「集落営農」も消えていく
3年前、田んぼのイロハを実施させてもらってきた集落の人たちが「もうだめ。やめる」と言い出した。年寄り家庭の田んぼをまとめて耕す「集落営農」をしていたのだが、その人たち自身が、70歳台後半になって、廃業を決めたからだ。
なので、2024年からは、私と妻が個人的に学んできた田んぼを、プログラムでも使うようになった。10数年耕作していなかった一枚上の田んぼも、びっしりとはびこった雑草をトラクターで起こしてもらい、「復田」した。トラクターを入れても、雑草の根っこは無数に残ったまま。泥だらけになってかき集めた根っこは、20メートルほどあるあぜ全体に、50センチほどの高さの山脈を作った。「復田」は簡単な作業ではないと、身をもって感じた。
隣の田んぼの持ち主は、今年80歳。手作業で田んぼに向かう私を見て、「昔はそうやったもんだ」とニコニコ笑ってくれる。その彼は、2024年の秋、稲刈りの機械コンバインや乾燥機、それが入っていた作業小屋を、全部処分してしまった。
「はー、もうせがれには田んぼはするなって言っている。カネがかかるばかり。コンバイン1台400万円もするから」と話してくれた。
そして、「大前さん、この山沿いの田んぼ買ってくれないかねー」という。
稲作の先生役だった老夫婦も、おじいさんは亡くなり、92歳のおばあさんが一人で農作業を続けている。「ただであげるから、田んぼ、もらってくれないかね」と、こちらからも声がかかる。
しかし、私自身も71歳。これから10年は田んぼ作業出来るかもしれないが、その後の責任は持てない。とても、すぐに「はい」とは、言えない。