突然のコメ不足、値上がり。そして、この事態をめぐるメディアの大報道。しかし、その前兆は2024年夏にはコメの産地では窺えた。
以下の記事は、魚沼のコシヒカリの中でももっとも美味しいコメの生産地として知られる南魚沼市の塩沢地区で米を作り、周囲の農家と交流しながら地球環境の問題と取り組むジャーナリスト大前純一氏の報告だ。大前氏は元朝日新聞社会部記者、南極報道などでも知られるが、インターネットメディアの先駆け「アサヒコム」の創設者、ネット報道のレジェンドでもある。
塩沢コシヒカリは魚沼の「頂点」日本で一番高い価格で農協が集荷
新潟県南魚沼市塩沢地区は、魚沼コシヒカリの中でも、もっとも高額で取引されてきた「塩沢コシヒカリ」の産地である。
ここで、休日農業講座「田んぼのイロハ」というプログラムを始めて、2025年で19年目になる。自宅から5キロほど離れた山あいの集落が舞台だ。農薬を使わず、できるだけ手作業で、昔ながらのコメ作りを学ぶ。プログラムは、田植え、草取り、草刈り、稲刈りと連続する。農と食、地域と暮らし、歴史を学び、持続可能な未来を考えるプログラムだ。
塩沢地区は、もともと福井県が開発したコシヒカリの試験圃(ほ)場の一つがあった場所だ。細かな気象条件(マイクロクライメートと呼ばれる)と土壌や水質が、コシヒカリに合ったようだ。また倒れやすいという特性を地元の農家が栽培方法を工夫して倒れにくく育てることに成功した。その結果、1俵(玄米60キロ)あたり2万円近い、日本で一番高い価格で農協が集荷する地域となっていた。2023年秋までのことである。